座談会
管工機材業界で働くとは? ROUNDTABLE DISCUSSION
座談会参加者(敬称略)

落合 智貴
東京管工機材商業協同組合
理事長

中村 優子
フリーアナウンサー
(ファシリテーター)

大島
(株)オーテック

但馬
小泉機器工業(株)

岩崎
(株)三澤商店

大内
冨士機材(株)

山中
(株)シンエイ・ネクサス

矢野
三和機材(株)
管工機材業界とは

中村優子
本日は管工機材業界で活躍する皆様にお集まりいただき、この業界で皆さんがどんな気持ちで働いていらっしゃるのか率直なお話をお聞かせいただければと思います。皆様よろしくお願いします。まずは落合理事長から「管工機材業界」がどんな業界なのかご説明頂けますか?

落合理事長
「管工機材」とは、水道のパイプなどの配管材料やポンプ、トイレ・お風呂・キッチン・エアコン・換気扇など、建物や工場設備に使われる資材・設備機器の総称です。東京管工機材商業協同組合の会員企業は、メーカーから仕入れた商品を、設備工事会社や建築会社などに販売しています。実際の工事現場に商品をお届けする、流通・卸売業という位置づけになります。
昭和20年代に創業したところが多いですから、創立70~80周年に当たる会社が多いです。戦後復興期に水道インフラを整備しなければならなかった、そんな時代背景で生まれた業界と言っていいと思いますね。ライフラインを支える業界であり、長く働ける、安定した就職先として認識して欲しいと思います。一方で壁の裏や道路下の配管にまでかかわっているので、一般の人には業界の存在が見えにくい、何をしているかの説明が難しいのが特徴かもしれません。
入社の経緯と仕事内容

中村優子
なるほど、ありがとうございました。たしかに「管工機材」という言葉は私も初めて聞きましたし、一般の方には馴染みのない言葉ですよね。何をしているのか説明が難しいというのは納得です。それでは皆さんに自己紹介して頂きましょう。入社の経緯や仕事の内容を簡単に教えて下さい。

大島(株)オーテック
オーテックの大島と申します。新卒で入社して今年で4年目を迎えます。私がこの会社を選んだ一番の理由は、選考中にお会いした先輩方の温かい人柄に惹かれたことです。正直にお話しすると、入社するまで「管工機材」についての知識は全くありませんでしたが、周りのサポートもあり、一歩ずつ覚えていくことができました。現在は営業事務として、見積の作成や受発注の業務を担当し、営業の方々が円滑に動けるようサポートを行っています。

但馬小泉機器工業(株)
小泉機器工業の但馬です。大学で紹介されたのがきっかけで入社しました。新卒で入社して10年になります。私も管工機材という業界は知らない状態で入社しました。営業職として職人さんを担当しています。

岩崎(株)三澤商店
三澤商店の岩崎と申します。もともと家業が管材販売店でしたが、新卒の際は管工機材の一次商社に入社して7年間営業をしてました。家業に転職して11年ほどになりますが、二次店の立場で営業をしています。毎年新しい商品が出たりするのでそれに対応するように努力しています。

大内冨士機材(株)
冨士機材の大内と申します。新卒で入社をして6年目になります。大学のキャリアセンターの方にご紹介いただき冨士機材を知りました。アットホームな雰囲気があり、入社後のイメージが湧いたので入社を決めました。総務・人事の部署に配属となり、現在は採用担当として説明会や面接、内定者や新入社員対応がメインの業務となります。

山中(株)シンエイ・ネクサス
シンエイ・ネクサスの山中と申します。入社6年目になります。就職活動の時に大手家電量販店に内定を頂いて、内定者アルバイトをしていたのですが、この業態だとAIやネットに負けてしまうのではないかと思い、就職活動を再開しました。弊社の社長から、人と人との信頼関係で成り立つ業界であること。またネットでは答えが出せない仕事が、この業界だと教えていただき就職を決めました。トイレは汚いものというイメージがありましたが、除菌機能のある機器が多くあり、メーカーさんはキレイにこだわっているという事に、入社して初めて気づきました。

矢野三和機材(株)
三和機材の矢野と言います。入社して22年になります。当時は就職難で、集団面接で応募しました。個性的な先代社長に"明日から来なさい"と言われてすぐに入社することになりました。やることが多いなというのが第一印象でしたね。人が重要な仕事で、お客様が型番をすんなり言ってくれる訳ではないので、お客様が欲しいものを読解することが必要です。商品知識はもちろんですが、施工方法の提案なども合わせて行う必要があります。
チームワークと人材育成

中村優子
矢野さんは管理職のお立場ですが、若手の指導に注意していることはありますか?

矢野
答えをすぐに教えないように気を付けていますね。何がわからないかを部下にしゃべらせるようにしています。それぞれ得意・不得意があるので仕事は一人でやるもんじゃないよという事も良く言っています。チームワークが大事だという事を分かってほしいですね。

中村優子
この業界ではチームワークが大事だったりするのでしょうか?

矢野
経験値が高い人に仕事が集中してしまう。その人でないとわからない。仕事が属人化しちゃうんですよね。

落合理事長
人に教えたがらないという傾向はあるかもしれませんね。それを変えたいんだけど変えられないというのは多くの会社が悩んでいると思います。

山中
弊社とお客さまとの信頼関係がしっかりと築けているので、新人が担当したとしても、うまく引き継ぎは出来ていると思います。私自身は新人の頃にお客様に商品の知識などを教えていただくことも多かったです。

但馬
小泉機器でも同じ感じですね。まあお客さんに"そんなのも知らねえのかよ"と怒られることが7割ですけどね。最終的には人間的魅力によるんだと思います。

中村優子
大手の会社である冨士機材さんの人材育成はどうですか?

大内
毎年50~60人くらい採用していますが、いきなり担当を持たせることはないです。商品知識を身に付けるための研修を行い、営業同行やOJT教育を経て2年目のタイミングで先輩社員から担当を引き継ぎます。研修制度が充実しているところは弊社の良さだと思います。
仕事のやりがいと誇り

中村優子
次に仕事のやりがいについても皆さんにお聞きしていきたいと思います。価値を提供している実感があるなとか、どんなところが誇れる仕事なのか、といった点を教えて下さい。

大島
電話やメールで飛び込む無理難題を解決し、完遂できた瞬間に大きなやりがいを感じます。私が手配した商品が最終的に街づくりや人々の生活を支える力になれる、その社会貢献度の高さが私の誇りです。

但馬
若い頃は目の前のお客さんの言われたことを100%やることだけを考えていましたけど、余裕が出てきた頃からショールーム商談からどう受注に結びつけていくか?とか、お客さんのさらに先のお客さんにどうアプローチするか?とか、そこまで考えた提案ができるようになって、それがハマってくるとやりがいが増してきましたね。

岩崎
自分が汗をかいた分だけ会社売上に直結する点が営業のやりがいだと思います。ウチは小さい会社ですけど、自分自身を営業マンとして売り込めば大手の競合他社にも勝つことが出来るのはやりがいですね。

落合理事長
経営者としては、適材適所に人をうまく配置していくとか、スタッフのモチベーションを上げていくことが大事だと思います。あとみんながせっかく一生懸命動いているのにうまく回らない場合、何か仕組みの中に問題がある場合が多い。そのボトルネック解消を経営者として出来ればやりがいを感じますね。

矢野
営業マンとしては他社より高くても「あなたから買いたい」と言ってもらえる瞬間が誇りです。部下が営業で成功したとき・お客様からの感謝や部署全体の売上が達成されたときも大きなやりがいを感じるところです。

山中
生活に直結している仕事であるということは、誇りでもありプレッシャーでもあります。コロナ禍で給湯器が入らなくて困るケースがあったのですが、どうにかして手に入れよう、代替の製品はないか、在庫を多く抱えておこうなど、考えたりしたこともありました。

中村優子
放送業界でも"放送を止めちゃいけない"みたいなプライドがあります。管工機材業界でも、インフラを支えているという実感、誇りがあるんですね! 大内さんは人事としてやりがいどうですか?

大内
会社の顔として人前に立つ機会が多い分、責任感を持って取り組めるところにやりがいがあります。採用活動で学生に業界を説明し、「大内さんの話が入社の決め手になりました」と言ってもらえたときは、本当に嬉しいですし、仕事の面白さを感じる瞬間です。
女性の働きやすさ

中村優子
この業界の女性の働きやすさはどうですか?

大内
事務職だけでなく営業として活躍している若手もいますし、最近はお取引先でも女性営業の方を見かける機会が多くなりました。産休・育休を経て復帰される方も多くて、キャリアを継続できる環境がしっかり整ってきていると感じています。会社としてもそうですし、業界全体としても、女性にとって安心して長く働ける環境になってきていると思います。

大島
女性の営業職も積極的に採用を始めています。時短勤務などの制度を活用しながら、ライフスタイルに合わせて柔軟に働ける環境がしっかり整っていると感じます。私のような事務職はもちろん、職種を問わず女性が長く安定して活躍できる土壌があるのは、とても心強いですね。

山中
ユニットバスやシステムキッチン等、住設から始めることが良いのかもしれません。そこを突破口に仕事を広げていくことができると思います。

大内
営業はもちろん、物流の現場でも女性は十分に活躍できると感じています。ピッキングや梱包といった作業に加えて、フォークリフトやクレーンの操作もあります。正確さや丁寧さが求められる仕事でもあるので、細かい作業が得意な方は特に活躍できるフィールドだと思います。
仕事の苦労とデジタル化

中村優子
次に、仕事の苦労や失敗談、それをどう克服したかというお話を聞けたらと思います。この業界ならではの大変さはありますか?

山中
生活インフラに直結しているので、「今日中に絶対必要」という状況が頻繁に発生します。断水作業時間が決まっている時など、コストをかけてでも運ぶ判断が求められることも多いですが"できません"で終わらないよう、心掛けています。

岩崎
マネージャーの立場では、部下からの報告が来た時点ですでに手遅れなケースが多いです。上に立つ人間として仕入れ先やメーカーさんのキーマンとの日頃の関係構築がいざという時に役立つと思います。ライバル社との横のつながりを作っておくのも大事になるときがあります。

落合理事長
組合の役割はそこにあるかもしれませんね。管材店によってどの商品に強いのか違いますので、あの商品ならこの管材店が強いというのも何となくわかっています。東京管工機材商業協同組合のホームページで「管材販売店MAP」を作っていますので工事店さんにも是非活用してもらいたいです。

中村優子
デジタル化とかDXはどれくらい進んでいるんですか? AIにできない人間らしさが大事というお話しも先ほどありましたけど。

山中
弊社はデジタル化には力を入れています。商品知識を社内ネットワークで共有したり、物流ではAIで配送予定を決めています。そのため、お客様に到着時間を正確に伝えることも出来ています。また見積もりに関しても、仕入先からの見積回答をボタンひとつで取り込めるようなシステムもあります。

大内
以前に比べると紙は減ってきていますが、まだまだ残っている部分もありますね。すぐにすべてをデジタルに切り替えるのは難しいですが、管工機材業界も少しずつデジタル化が進んできていると思います。

中村優子
お客さんが紙だったら、こっちだけデジタルってわけにはいかなそうですね。もしかして請求書は郵送で送っているんですか? PDFとかではなく?
一同
はい

中村優子
え~~!!! まだそのような形が主流なのですね。現金のやり取りもありますか?

落合理事長
ウチでもカード使えないならいいや~と帰って行かれる方が増えてきたので、交通系やクレジットを使えるようにしました。コロナ以降、やっと集金がなくなりましたね。紙の手形・小切手も廃止になりますから。
これから業界に入る方へ

中村優子
次にこれから管工機材業界に入る皆さんへのアドバイスがあったら教えて下さい。この業界はこんな人が向いているよ、というのはありますか? 人と話すのが好きな方はマッチしそうな印象ですが、口下手な営業さんっていますか?

落合理事長
口が上手い人より、長く向き合える人が向いてるかもしれません。一発勝負の営業トークより、お客さんが何に困っているかを理解して適切な答えを返せるほうが大事だと思います。モレのないミスのない事務処理能力も結構大事ですね。

矢野
自分もミスするし、お客さんもミスするので完璧な仕事はできないものです。無理な時はギブアップも言えた方がいいと思います。どうにもならないときは誰でもいいから助けを借りる方がいいですね。

落合理事長
お客さんとは10年、20年というのも多いと思います。人間関係で成り立っているので、付き合いが長くなる。職人気質の人って、信用できる人としか話したくないっていう人が多いと思うんですね。"こいつは逃げないな"と思ってもらえれば長く付き合えますけど、その信用を得るまでには高いハードルがある気がします。

中村優子
口下手だけど、じっくり付き合うのは出来るかも。と思う人は向いてるかもしれませんね。

落合理事長
お客さんが口では褒めてくれなくても、次の注文が来るってことは"自分が信頼されてる"事の確認になるから、だから注文をもらうと嬉しいんだと思います。
若い世代との向き合い方

中村優子
若い後輩との向き合いはどうですか? 褒められたい若者の方が多いのでは?

大島
私個人としては、やはり褒めていただけると素直に嬉しいですし、モチベーションに繋がりますね。厳しく怒られた経験はなく、最近は社会全体としても指導のあり方が変わってきているので、先輩方も私たちに対して、すごく気を配って接してくださっているのを感じます。

大内
褒められて伸びるタイプの若手は多いと思います!私自身も褒めていただけると「もっと頑張ろう」と前向きな気持ちになります。とはいえ、キャリアの方向性や働き方の考え方はそれぞれで、タイミングによっては次のステップに進まれる方も一定数いる印象です。学生と話していても、成長意欲はありつつ、ワークライフバランスを重視する方が増えてきていると感じますね。
まとめ ─ 管工機材業界の未来へ

中村優子
最後に落合理事長にまとめていただきましょう。今日のお話全体で感じたこと、これから入る若手に期待したいこと、業界をどう変えてほしいかをぜひ!

落合理事長
業界として古い体質が残っているのを改めて感じました。その背景として職人気質な人との対応や、臨機応変な対応が必要な場合が多いからだと思います。逆に言うとAIでは対応が難しいかもしれません。
採用が難しい時代に入っていますが、管工機材は社会性がある業界で、我々がいなかったら水道工事はうまく進まないわけです。職人さんや我々流通業者が少なくなってくると、生活が快適に回らなくなってくる可能性もあります。職人さんがうまく仕事を回していけるようにサポートしていくのが我々の仕事です。水の出ない生活はあり得ないですから。社会的な意義がある業界だと感じてほしいと思います。どんな仕事でも会社でも苦労はあると思いますがそれを乗り越えたところにやりがいがあると思うので。

中村優子
価格だけではなく、人と人の結びつきが大事な、魅力的な業界だと改めて感じました。
縦割りの組織が多い中で、一人の裁量が大きい業界かもしれませんね。

落合理事長
特に中小企業ではそうでしょうね。一人の力によって会社が伸びることもあればダメになっていくこともある。そこにやりがいを感じてほしいです。
知識を得れば得るほど提案力が増して、面白くなっていく仕事だと思います。

中村優子
これからの管工機材業界に期待したいと思います。皆さんとおしゃべり出来て本当に楽しかったです。本日はありがとうございました。
- ファシリテーター
- 中村 優子 氏(フリーアナウンサー)
- 座談会参加者
-
東京管工機材商業協同組合 落合理事長
(株)オーテック 大島氏
小泉機器工業(株) 但馬氏
(株)三澤商店 岩崎氏
冨士機材(株) 大内氏
(株)シンエイ・ネクサス 山中氏
三和機材(株) 矢野氏




